自転車の 共振(シミー現象)の原因は前輪ブレーキにあった

自転車に限らず船舶や飛行機など大気の抵抗を受けながら進む物体は常に振動が発生し、その振動が他の要因と重なって共振となりやがてハンドルや躯体に大きな振れが発生することがある。
取り分け私が経験したロードバイクとマウンテンバイクの恐怖の「共振」について自分なりにその原因を究明してみた。

ロードバイク

今から55年前、片道約4kmの中学の通学用に丸石ヤングホリデー(初期型、デコレーション無し。セミドロップハンドルを学校の指定でアップハンドルにして)に乗って以来、ランドナー、マウンテンバイク、ロードと今日まで自転車に親しみ楽しんできた。
特にレース志向というものではなく、もっぱら近場で行われるサイクリング大会等に参加して楽しむ程度であったが、定年退職後の昨年10月には「サイクリングしまなみ2022」に遠征した。そして好天のしまなみ海道往復140キロを満喫し、改めてサイクルスポーツの愉しさ、爽快さを知った。
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ただ、その長いサイクリングの愉しみの中で突然不安と恐怖に陥ったことがある。それが「共振」シミー現象とも言われるハンドルの突然の振れである。

最初に「共振」を経験したのは約10年前、仲間たちとツーリングの最中。
長い下りの途中、突然、意思とは無関係にブルブルとハンドルが震え出した。
その振幅が次第に大きくなってコントロールを失い、あわや大惨事という恐怖に見舞われた経験がある。

さてはパンク? スポークが折れた? クイックリリースが緩んだ⁉など考えるゆとりはない。

初めての体験になすすべはなく、出来ることと言えばハンドルしっかりと掴み、スピードを落とすのみである。

恐怖の中、どうにか減速し無事に停車した。
そして前輪、後輪、ハンドル、フレーム(アルミ)を点検するが特に異常は見当たらない。
後続の仲間も「急にハンドルがグラグラっと震えましたね」と目玉を丸くするばかりだ。

帰宅後ホーイール(手組)の振れを詳細に点検したがこれといった異常は見当たらない。強いて言えば¼回転弱の振れを修正し、それが路面等の振動とたまたま共振しハンドルの震えの原因と断定した。(断定せざるを得なかった)

2回目の「共振」は昨年(2022年)ソロツーリングの途中長い下りの途中にあったトンネルに入った時。

サングラスでトンネル、それも古くて照明も乏しいトンネルだから瞬時に闇夜と化す。
徐々にブレーキを掛けて減速し、間もなく出口にというところに差し掛かった時それが発生した。
闇の中、ブルブルと震える手で必死でコントロールを保ちスピードを殺して事なきを得た、が、もし対向車に大型トラックや追い越しをかけた後続車がいたらと思うと今でも生きた心地がしない。
この時は1回目とは異なるバイクで、ホイールは完組、フレームはカーボン。
点検しても特に異常は無かった。
思い当たる節といえば暗いトンネルを走る緊張感による腕の硬直か? 
或いは高齢による手の震え?
もしそれが原因ならロードバイクの免許返納である。

そして3度目は立て続けに今年(2023年)6月、仲間と走行中、やはり直線の長い下りの途中にブブブルグラグラと来た。

50代の後続者も「共振しましたね。私も一度あります」と言ったが原因は判らない、とも言った。

今回のバイクはホイール、フレームもカーボンで1回目、2回目とは異なるバイクである。
その場で点検するもやはり異常は無かった。

昨年に続いての「共振」である。原因が分からないだけに不安は募るだけである。
運よく命拾いしたがこのままではロードバイクに乗れない。

原因はやはり加齢によるものか?
ショックは大きい。

しかし、ネットで皆様のご意見や体験を窺ってもどうやら年齢には関係なさそうである。
それになるほどという原因も見つけることが出来ない。

ならば、何とかして自分でその原因を突き止めよう!
さもなければいよいよロードバイクの免許返納である。

原因究明

共通点
1.比較的長い下り、それもほぼ直線で発生。
2.下りの途中、時速30~40キロでスピードコントロール中(ブレーキング中)に発生。
3.ブルブルと震えが始まってあわやあわやと思う間もなく震えが更に大きくなって(共振して)ハンドルが左右にグラグラとブレだす。
4.ブレーキの前輪対後輪の比率は後輪によるスピードコントロールを心掛けてたつもり。
5.コントロールが不能となり、必死でスピードを落とすとやがて共振が止む。
6.点検しても車体に異常は認められない。
7.3回発生し、いずれもフレームもホイールも異なるロードバイクである。

以上の状況により車体(ホーイールやフレーム)に原因があるとは思えない。
それではブレーキングにより腕に力が入ってその腕の震えがハンドルの微妙な振動と共振してハンドルがブレたのか?
それならば加齢による腕の震えも考えられる。
しかし、調べてみると比較的若いライダーも「共振」を経験しておられるから一概に加齢が原因とは言えない。

ところで、マウンテンバイクで低速で走りながら体重を前輪に移動しフロントブレーキをグッと掛けると前輪は瞬時にロックし、後輪がフワッと浮き上がる。
そしてロックした前輪を支点に倒立したところでハンドルを切ればその方向に車体は回転する。所謂ジャックナイフターンである。

このように前輪の特性として、ブレーキを掛けると、後方からの押す力がタイヤの接地面に食い込むような荷重となって急激に減速し、制動力は極めて強力である。

万一走行途中に前輪がロックしたら即転倒、大惨事となる。

一方後輪は体重による加重が前輪より大きく、更に慣性で前に引っ張れられる力が働く。
よって制動力、減速力は前輪より弱く、たとえロックしたとしてもスリップしながら前に進む特性がある。

即ち、5:5はもとより4:6、3:7、場合によっては2:8の割合で後輪に制動力を掛けたつもりでも実際の制動力は前輪の方が強力となる可能性が高い。
もし、利き腕が右手(前輪ブレーキレバー)の場合はなお更である。

もし、下り坂で後方から、制動トルクの弱い荷重で押されながら前輪ブレーキを掛け続けた場合、車体は前につんのめりながら必死に減速しようともがく。
そのもがきに構わず(気づかず)ブレーキを掛け続けると、慣性力と制動力のバランスを崩し、もがく前輪の力は間もなく震えとなり、その震えが適度なスピードと共振しコントロール不能の大きなブレとなるのではないか⁈

それを決定づけるある出来事を思い出した。

今から30年位前、あるサイクリング大会での出来事である。
峠を越えた田舎の狭くて長い下り坂を走っていた時、ブラインドカーブに差し掛かった。
私は次のカーブはくの字型に曲がりその先にはせせらぎのような小川に架かる橋が在ることを知っていたのでそれに備えて減速したが、前を走るライダー氏はそのままのスピードでカーブに差し掛かった。
私は「あのスピードで大丈夫⁉」と思ったその瞬間、

ライダー氏のハンドルが大きくグラグラグラと振れ、次の瞬間そのままのスピードで石の欄干に激突。

氏は宙を舞って向こう岸の土手にほぼ背中から着地した。
これまでに遭遇した最大級の自転車事故である。
ただ、着地点が超奇跡的に草が茂った肥沃な土手で、宙を舞った中年のライダー氏は自力で体制を整えた。
あと1メートル少々手前は石ころだらけの河原であった。
大丈夫ですか、と声を掛けると、

「何とか大丈夫です。それより、自転車は大丈夫でしょうか?」と土手に座り、憔悴した声で氏は言った。

私が自転車を確認するとトップチューブの先端が蛇腹のように縮んでいた。
後の情報では鎖骨骨折という事であった。不幸中の幸いとしか言いようがない。
因みに、そのコースでは毎年マラソン大会が開催されており、私はそのマラソン大会にも参加しており、状況を把握していたのが幸いした。

それは兎も角、問題は激突直前の急ブレーキによるハンドルの「グラグラグラ」と大きな振れ、まさしく「共振」である。

即ち、ライダー氏は急カーブに慌てて(反射的に)前後のブレーキで急制動し、後輪の制動以前に前輪に制動力が集中したことで行き場を失った後方からの急激な加重(力)がハンドルの大きな振れとなってコントーロールを失っての惨事である。

ただ、後輪を先に制動させたとしてもあの状況なら、ハンドルの大きなグラグラグラは無かったとしても(後輪の横滑り転倒、激突で)結果に大差は無かったかもしれないが…。

以上の理由により、ロードバイクの共振(シミー現象)は制動時に、後輪より前輪の制動力が強くなった時、それも連続的に掛け続けた場合、後方から押される負荷に耐え切れずに発生する振動、と結論づけた。

原因が解かれば予防策は簡単である。

スピードコントロールは後輪。

前輪のブレーキを使ってスピードを落とす場合は断続的に掛ける。

即ち手動ABSとすること。決して、掛け続けてはならない。

要するに初心者的ミスである。

それでは何故ここ十年に発生するようになったのか?
一つだけ思いあたる節がある。
私は十数年前にモペットを買った。
それは、エンジン付き自転車の重い車体で、ブレーキはママチャリと同じ前輪はキャリパーブレーキ、後輪はローラーブレーキである。

効きは極めて悪い。

特に前輪はフルブレーキを掛けても重い車体をいつまでも引きずって止めることが出来ない。後輪も同程度である。
よって、前輪をマウンテンバイク用のVブレーキに取り換えた。
それでもロックするほどの制動力は無いが、リムへの接地面積が広くなった分制動力は強まった。
勿論、後輪はママチャリのままである。
だから停車や減速時は効きの良い前輪(右ブレーキ)でスピードコントロールする癖が知らないうちについたのかも知れない。

何はともあれ「共振」の原因が加齢によるものでないことに一安心である。

マウンテンバイクの共振

マウンテンバイクバイク(MTB)の全盛期(1990年頃)、週末には林道や山に登って時には担ぎ上げ、下りは獣道などのオフロードを愉しんでいた。
最近はめっきり下火となったがMTBはロードにはない愉しみがあった。

現在のMTBはサスペンション付きのフオーク(中には前後共に)が常識となっているが当時はフロントサスペンションはあまり普及しておらずノーマルのフオークであった。

それで凸凹のオフロードを調子に乗ってガンガン下っていると、「ポンポンポン」とハンドルが上下に跳ねだす。
(ロードはハンドルが左右に「グラグラグラ」に対してMTBは上下に「ポンポンポン」)

まるでは暴れ馬に乗ったように上下にはじかれるように跳ね、加速するとそのブレは大きくなり、コントロールできなくなる。
だからロードバイクと同じく必死の思いでブレーキを掛けてスピードを殺す。

原因と対策

この原因は、下りにスピードが増してくると凹凸の路面に連続して跳ねるタイヤが上下にリズムをとって振動となり、やがて一定のスピードと「共振」して振幅が広がり、暴れ馬状態となっての暴走である。

MTBの共振については上下に跳ねるから凡そ原因も分かっていたので安心していたという分けでないが、比較的よく発生していたように思う。

ところがある時からその「共振」が一切なくなった。

それはフロントフォークの衝撃を吸収してくれるサスペンションに交換したときからである。

取付けたサスペンションは「マニトウ」のエラストマー方式(伸縮率の異なる太いボルトのようなゴムを連結させて衝撃を吸収するタイプ)で今はほとんど見かけないが、下りでの振動吸収効果は絶大であった。

ロードバイクに於いてもサスペンションが有ればフロントホイールに掛かる荷重を吸収してくれるだけでなく、コーナリング時の食いつきも良くなるはずである。
(立ちこぎやアタック、スプリントではサスペンションをロックか)

近年ロードバイクもMBT同様ディスクブレーキ全盛となったが、次のロードバイクは超軽量フロントサスペンション搭載の時代到来に違いない。

オートバイの振動の原因

これまでオートバイでハンドルが共振で振れた経験はない、が、スピードが出るとハンドルが振動する、ブレる。或いは手放し運転するとグラグラと振れるという話をたまに聞く。

もし、それが車体に異常が認められないのに発生する、という時の原因は、凡そ積載荷物の重さの左右のアンバランスが考えられる。

船も飛行機も重心は常に中心に来るように積載される。もしそのバランスが前後、左右で異なると、偏った方向に沈んだり曲がろうとする。そうなると真っ直ぐ走ろうとする力と曲がろうとする力の差が振動となり、スピードや燃費だけでなく安全性にも支障を来す。
バイクの場合アンバランスな荷重であっても知らないうちに身体で微妙なバランスをとっているが、一定のスピードになってくると車体は真っすぐ走ろうとする力が強くなす。その僅かな差が微妙な振動となり、一定のスピードに達するとそれが共振して大きな振れになる可能性がある。
また、リアに片方だけのバッグを取り付けた場合、重さに加え風の抵抗による振動も考えられる。

尚、オートバイの場合、エンジンの鼓動やタイヤ、路面、風圧等常による微妙な振動が常に発生しており、その振動が共に打ち消しあったり一定のリズムで共振し振れる可能性もあるらしい。

ともあれ自転車、オートバイの共振の原因については車体に異常が無い場合、例えばホイルバランス、タイヤ(空気圧含)、フレーム、チェーンやボルトの緩み等に異常が無い場合に考えられる個人的な考えである。